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「ベッドに入ったら病人になってしまう」

当たり前ですが今は冬です。しばれます。
雪なんてなければ良いのにと思うこともありますが、
やっぱり北海道でいちばん好きなものは、雪です。
関東育ちの自分にとっては滑りたいときに滑られる、
上越の雪とは全く違う粉雪が、何年経っても素晴らしいと思っています。
年末に雪が積もった朝に、長男と雪の上を歩いたのですが、
やっぱり北国の雪は本当にやわらかくきれいです。
スキー場のリフトの上でバックカントリーな外国人に聞くと、
「ここが世界で一番のパウダー天国だよ」と皆が同じことを言います。

そんな冬にありがたいもので、温かい布団とお風呂でしょうか。
12月にたまたま同じような患者さんにお会いしました。
100歳近くのおばあちゃん。
認知症になられてから7年間、娘さんがほとんどひとりで介護を続けていました。
だんだんと元気はなくなってきて、12月には食事も食べられなくなりました。
これからは褥瘡ができることなどが不安です。
今までは座りなれた居間のソファに座って日中を過ごしていたのですが、
ケアマネさんがパパっと素早く福祉ベッドを用意して下さります。
もうベッドの用意も充分、さあこれから自宅で介護を使用という時です。
金曜日の夜に往診をした時に、娘さんから言われました。
「先生、やっぱり大きなベッドはやめようと思うの。」
今まで夜に眠る寝室を拝見したことはなかったのですが、
小さく軽くなったおばあちゃんの身体を、
娘さんが車いすによっこらしょと乗せて、
ベッドルームまで連れて行ってくれました。
その先には親子が一緒に寄り添う、
大きなベッドが敷いてあります。
「なんて安らかな空間なんだろう。」
僕たちの仕事はおせっかいを焼く仕事です。
電動の福祉ベッドを見たことのない患者さんに、
こんなサービスがありますよと説明し、
患者さんの身体が大切に介護されるように、
必要な支援をてきぱきと導入していきます。
ケアマネの仕事としてなにもおかしいことはありません。
けれども今回は、自分たちが見えていなかった、
もっと大切な想いが隠れていました。

娘さんとお母さんはこの七年間、
ずっとふたりでこのベッドに一緒に寝ていたんです。
電動ベッドはとても便利なものだけれども、
このベッドを導入したら、
夜のふたりの時間を奪ってしまっていました。
居間も病室のような景色に変わっていたのだと思います。
その瞬間に、急いでケアマネさんに連絡をして、
ベッドのレンタルをキャンセルしてもらいました。
子育てをしているとよくわかります。
子どもは寝顔がいちばん天使です。
起きているときはまあいろいろと手がかかりますが、
寝ているときの寝顔も、寝息も、
感じることのできる時間は全て宝物です。
この娘さんはその時間を大切にしたかったんでしょう。
本当に、お母さんが好きだったんです。

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