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コンピューターおばあちゃん

年号が令和になってから元年があっという間に過ぎ去り、令和2年になっています。
西暦で申し上げると、2020年になりました。
東京オリンピックの開催が決まった時にはずいぶん先の事だなと思いましたが、
時が経つのは早いものですね。
昨年のブログに緒方拳さん主演の「楢山節考」を思い出したと書いたら、
とある保育士さんから、「年齢がバレてしまうね」と言われました。
同じような昭和の時代で一世を風靡したお唄のひとつに、
坂本龍一さんプロデュースの「コンピューターおばあちゃん」があります。
おばあちゃんが宇宙空間でなんだかすごい機械と宇宙船を自由自在に操る、
そんなどんなにひっくり返ってもひらめかない発想がインパクトを与えてくれました。
実際にある例では、
「オトナな」「保育園」とか、
「ちょいワル」「おやじ」とか、
「手作りでこさえた」「注射」とか、
どう考えても結び付かない概念の組み合わせが社会に衝撃を与えます。
どうしても「コンピューター」と「おばあちゃん」は結び付かないのです。
先日に患者さんのご自宅に往診に伺った時に、
遂にその時代がやってきたか!という出来事がありました。
スマートフォンとインターネットを使いこなす80代のおばあちゃんです。

その患者さんはおばあちゃんと表現するのが申し訳ないくらいお若く見えます。
現役の時には、今どきの若い人が働きたくなるようなファッショナブルな、
カタカナの仕事(ウェディングデザイナーとかアクチュアリーみたいな)
をあさま山荘事件の年に始められていたそうです。
保育士は「保母」、看護師は「看護婦」、女の子の憧れは「スチュワーデス物語」の時代です。
北海道ではさきがけで、ナウな仕事ではなくカッティングエッジな職業です。
お話しをしていると、
「往診前の電話はこちらにかけてほしい」とご自身のスマホの番号を教えて下さいます。
ご自身でアプリを開いて、ササっとプロフィールを開き、電話番号を教えて下さいます。
「スマートフォンを達者にお使いになられるんですね」と驚きつつ伺うと、
「これのおかげで、私にとって唯一社会とつながっているんです」と仰います。
調べ直してみると、スティーブジョブスさんがiPhoneを初めて発表して、
こんな社会になるとブロードキャストをした年が平成19年の1月なのだそうです。
当時を振り返ると、こんな80代のおばあちゃんが出現するなんて誰しも想像していませんでした。
静明館診療所の矢崎先生はそんな時からアップルのパソコンしか使われていませんでしたが、
そんなLinuxベースで先鋭的な一部の人にしか分からないものだったのでしょうか。

それほど過去ではない一昔前には、
木造平屋建てにお住まいの明治生まれの患者さんがままいらっしゃり、
北朝鮮から韓国の島へミサイルが放たれたという一報をブラウン管のテレビで見ると、
「戦争が始まったぞ!」と患者さんが太平洋戦争の開戦を思い出して驚く。
おうちには黒電話ひとつで、おうちに伺う直前にはベルを3回だけ鳴らす。
訪問看護ステーションとのやり取りは、携帯電話での通話とファックス。
郵送は全て手書きで一枚ずつ。
メールはSMSというものは存在せず、EメールかCメール。
パソコン画面の右上にいるイルカさんが動いてビックリ!
電子カルテはExcel兄弟のAccessというソフトで組み立てたファイルで、
それでも当時はとても画期的でした。
普通の学生や社会人がこれほどポータビリティを備えて、
インターネットにつながる時代だけでも想像できませんでした。
それが今では、
傘寿をとっくに過ぎたおばあちゃんのニューラルネットワークが、
iOSアプリを通じてコンパイルされたので8時だよ全員集合!
みたいななんだかわけのわからない時代です。

ふと立ち止まってうちのクリニックを振り返ってみると、
既に電子カルテはアクセスのマクロではなく電子通信でのクラウドソースですし、
事務作業の省力化のために裏で使用している言語はPythonですし、
クリニック内での情報伝達は驚くことにセキュリティを確保されたSNSです!
職員同士で電話で通話をすることはよほどの時以外はなくなりました。
そんな変化を考えると恐らく次の12年間では、
クルマの運転席に人が乗っていない時間ができたり、
電子カルテの入力に指を使わなくなったり、
病院同士のカルテの内容を同時並行的に見ることができたり、
それほど夢物語ではない気がします。
それを必然として、自分達も準備をしておかなければならない気がします。
平成19年には、「さすがにそれはないだろう」と思っていましたが、
戦争を知らない世代と言われる昭和二桁生まれの80代が出現し、
おじいちゃんやおばあちゃんがスマホを使って社会とつながり社会を動かす、
人間ならばどの世代だって進化することに気が付きました。
これからの12年間は、どうやらそんな、
コンピューターおばあちゃんがたくさん生まれる時代になりそうです。

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